「客先常駐」と「自社開発」はどっちがいい？エンジニアの戦略的キャリア形成。

客先常駐 or 自社開発？ ITエンジニアの働き方とキャリア形成

エンジニアには、客先常駐と自社開発という大きく2つの働き方がある。それぞれの特徴とメリット・デメリットを比較し、エンジニアのキャリア形成について考えていく。

客先常駐とは？常駐型スタイルのメリット・デメリット

客先常駐は「SES」とも言われる。SESとは、System Engineering Service（システムエンジニアリングサービス）のこと。クライアント先（客先）に技術者が出向き、システム開発する契約形態。基本的に客先に常駐し、クライアントのシステムを開発・保守・運用などの業務を請け負う。準委任契約となり、納品物ではなく派遣された技術者の労働（時間）に対して報酬が発生する。また、客先に出向くだけではなく、自社内でクライアントのシステムを開発するケースもある。持ち帰り案件と言う。クライアントのシステムを開発するという点では変わりない。

メリット

多様な現場や案件を経験できる／残業が少ない／安定して仕事がある
多種多様な案件や幅広い技術を経験できるためスキルアップしやすく、多彩な実績が積める。外部での開発を必要とする企業はまだまだ多く需要が高いため、仕事量が安定している。環境・文化・業界などが異なるさまざまな現場を経験できる。スキルの幅を広げることはもちろん、自社以外のスタッフとも多く関われることから人脈も広げやすい。時間計算になるため残業は少ない。

デメリット

帰属意識を持ちづらい
他社で働くため自社への帰属意識を持ちづらい。しかし、雇用企業でもさまざまな工夫が見られ、定期的な社内イベント等で交流を行う企業も多い。

自社開発とは？「オリジナル」スタイルのメリット・デメリット

自社開発とは、自社独自のサービスやアプリを自社で開発すること。自社内で利用される「社内システム」と、外部ユーザー向けの「自社製品・サービス」がある。

メリット

一貫して携われる
上流から下流まで一貫して携われるため、自分たちで一から作りあげる楽しさがあり、その分野に特化した高度な技術を習得できる。開発中も納期やスケジュールの調整など融通を利かせやすく、リリース後はダイレクトにエンドユーザーの反応が届くため開発に反映できる。

デメリット

経験やスキルが偏る／人脈を広げにくい／研修や教育体制が不安
自社のプロダクトにしか携わらないため、一定の分野や技術しか経験できず、実績やスキルの幅を広げにくい。コミュニケーションの相手も基本的には社内に限られるため、社外の人脈を作っていくことが難しい。また、即戦力として中途採用する場合が多く、社内の研修制度や体制が整っていない企業が多い。そのため、未経験や経験が浅いエンジニアにとってはハードルが高い。

20代でスキルと実績を手に入れるには？ ITエンジニアの戦略的キャリア形成

客先常駐・自社開発にはそれぞれ異なる特徴やメリット・デメリットがある。
若手エンジニアがキャリアアップや市場価値向上を目指すうえでは自社開発より客先常駐のほうが向いていると言える。これは、多様な案件や技術が経験でき、幅広いスキルや実績を手に入れて自身のレベルを底上げできるためである。
ある程度経験を積んだ後は、特定分野に精通した技術者を目指せる自社開発への転身が定石であるが、広くスキルアップを優先するならばそのまま客先常駐の道に留まることも一つの選択肢と言える。

そもそも、自社開発企業への入社には高いハードルがある。自社開発企業は客先常駐のように幅広い案件を保有しているわけではない。スキルに応じた案件に携わるということができない。そのため、該当するスキルを持っていたり、実績を持っている人材を即戦力として採用するため、経験が浅いうちから自社開発企業へ就職・転職することは非常に難しい。このことからも、キャリアの初期段階では戦略的に客先常駐を経験し、スキルや実績を確保しておくことが有効と言える。これらの実情を踏まえ、戦略的なキャリア形成を実現してほしい。