「事務」という選択肢。DX、AIで無くなる？事務職について知っておくべきこと。

転職希望者に根強い人気がある事務職の仕事。その実情と将来性とは？

残業の少ないイメージや応募しやすいといった理由から、年齢・性別を問わず常に高い人気を誇り、転職競争の激しい事務職。しかし昨今、RPA（Robotic Process Automation／ロボットによる作業の自動化）の導入などにより企業のDX（デジタルトランスフォーメーション）が進む中で、その将来性が危ぶまれつつある。
今回はそんな事務職の仕事内容や、実情と将来性について解説する。

事務（一般事務・営業事務）職の仕事内容

事務職とは、書類・PCを扱う事務作業や社内のサポート業務を広く担う職種である。総務事務、経理事務、医療事務、貿易事務などその種類は多岐にわたるが、基本的には大きく「一般事務」と「営業事務」の二つに分類される。

一般事務

主に、書類の作成・管理や、電話・来客の対応、データ入力、郵便物の処理、備品管理などを行うケースが多いが、実際の担当業務は企業ごとに大きく異なる。サポート業務が主となるため基本的には自社メンバーとのやりとりが多いが、メール・電話・来客の対応（受付）など社外のお客様とのやりとりが発生するケースもある。

営業事務

営業メンバーをサポートするポジションとして、各種書類作成、受発注データの入力、入金管理など、営業活動に伴い発生する社内の事務作業を担う。担当者の代理や一次受けとしてメール・電話・来客の対応も行うため、社外のお客様とやりとりを行う機会は一般事務に比べて多く、事務方ではあるが営業チームの一員となる。

人気職種・事務職のリアルな事情。転職は実現可能？DX加速の影で揺らぐ将来性

残業が少なそう・応募しやすそうといった理由から、性別や地域を選ばず、20代に限らないさまざまな年齢層に人気の事務職。イメージに違わず、「定型業務メインのため残業が少ない」「資格や学歴は不問の求人が多いため応募ハードルが低い」といったメリットがある。
しかし一方で、「競争率や選考の難易度が高く転職実現の可能性が低い」「入社後のキャリアアップ・年収アップが難しい」といった見落とされがちな側面もあることに注意が必要。

転職競争率に関しては、厚生労働省が公表する有効求人倍率の0.36倍（令和3年9月分／事務的職業※含パート）という数字からもその厳しさがうかがえる。加えて昨今では、DXによる定型業務の自動化に伴って仕事の減少が懸念され、安定性や将来性に不安が生じている。実際に、大手銀行による「事務員3000人の営業職への配置転換」といったニュースをはじめ、事務員削減の声を耳にする機会も増えてきた。

これまでは「業種に関わらず多くの企業に必要」「時代や年齢に左右されない」といった理由から「とりあえず」で検討する人もいるほどベターな選択肢であった事務職だが、安定性・将来性ともにリスキーな状況になっていると言わざるを得ない。なお、求人はすでに減少傾向にあることから、転職実現の可能性も今後ますます低くなっていくだろう。

以上のことから、DX推進が加速する現代において事務職は、転職におすすめの職種ではなくなっている。特にキャリアの土台を作るべき20代の転職においては決して理想的とは言えない。
これを踏まえ、慎重に検討することをおすすめする。

※出典：一般職業紹介状況（令和3年9月分）について（厚生労働省）https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21819.html